シムラブロスの“映画”の歴史 池上司
私がシムラブロスの作品を知ったのはそれほど昔ではない。わずかここ数年の話である。振 り返ると、2009 年の夏頃からグループ展などで見かけていたようだが、あまりはっきりとは覚 えていない。その後、2010 年の秋に京都で初めて彼らの個展を見たときの驚きについては後述 するが、なぜ、それまで、私は彼らの作品を見過ごしていたのだろうか。じつは、その些細な ことがらに、シムラブロスの創作を理解するきっかけが含まれていた。ともかく、経緯をひも といてみることにしよう。
*国立シンガポール大学出版カタログ「ROAD TO SINGAPORE」より